人が生まれてくるのには、2つの大きな目的があるのだそうです。1つは幸せになるための努力をすること、もう1つは誰かに喜んでもらうこと。
1つめの「自分が幸せになる」ことに関してですが、人生の半分近くを占めるのが仕事です。自分が選んだ仕事は楽しくないけれど、食べていくためにはしかたがないと思って働くよりも、その仕事が好きであったり、得意な分野であったり、やりがいを感じたりできるほうが幸せです。そう感じられる仕事を見つけられるかどうかは、学生時代の準備にかかっています。つまり、学校はそれぞれの生徒の適性を見極め、才能を引き出し、興味が持てるものや好きなものを増やし、できないことをできるようにする努力をしている生徒を励まし、最後までつきあうことが一番の仕事です。
もう1つの「人に喜んでもらう」ことに関しては、自分の結婚相手でもいいですし、自分の子どもや生徒、保護者、あるいは同僚の先生方、地域の方々など、だれでもいいから自分を必要としてくれたり、自分がやっていることを喜んでくれたりする人がいれば、生まれてきた価値があると思います。
教師という仕事においては、生徒が「やった!」「伸びてきた!」「できた!」「先生、合格したよ!」などと喜んでいる姿を見ることが、何よりの喜びです。生徒の才能を伸ばし、できることを増やしてあげることで、生徒や保護者に喜んでもらえるのが、無上の喜びとなる職業です。つまり、「自分が幸せになる」ことと、「人に喜んでもらう」という人生の二大目標を、同時に達成できる職業なのです。
私は、英語は好きだったのですが、それ以上に人と関わることが好きでしたし、子どもが好きでした。ですから、教師という職業を選びました。今でも英語を教えること以上に、それぞれの学生が自らを生かす道を見つけるプロセスにつきあうことを楽しんでいます。大学生の進路相談は、人生相談そのものです。人生の選択が差し迫っているからです。ですから、できうる限り誠実に対応することを心がけていますし、その人の適性を一緒に考える中で、教師よりもよい進路があれば、積極的にその道に進むことを考えるようにアドバイスしています。誠実に対応すれば、学生も私に誠意を返してくれます。それは本当にうれしいことであり、感動すら覚えます。
一方で、授業がうまくいかなかったり、生徒と信頼関係を築けなかったり、同僚と良好な人間関係を構築できずに苦しんでおられる先生方もたくさんいらっしゃいます。それらの先生方が、苦悩する中で授業改善の努力をなさったり、生徒指導やコーチング、あるいは自己啓発セミナーなどに身銭を切って参加なさったりする姿は、とりもなおさず、よりよい生き方を模索しておられる姿であり、それこそまさしく生徒の手本となります。
完璧な人間などいません。人生できないことだらけです。それを恥じたり惨めに思ったりするのではなく、できないことを1つずつできるようにしていく楽しみが人生にはあると思って、better than yesterdayを心がけて生きれば、教師であろうがなかろうが、充実した人生を送ることができると思います。どうか、自分にあった道を探してください。そして、迷路と同じように、いったん選んだ道が間違っていれば、後戻りして別の道を進むことを躊躇しないでください。ただし、学生時代に、そして社会人となってからも、異なるオプションをするときのために、再就職ができる力を蓄えていってくださいね。
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