英語の授業では、部活動に例えると、@公式戦(外国人との対話やメール交換、ALTとの1対1のインタビューテストなど)と、A練習試合(Write and Talk and Talkの水色やピンクのページ、ピンクの下線部などに関して、生徒同士の即興の会話や教員やALTとの会話練習など)、B普段の練習(Write and Talk and Talkの黄緑のページや、ワークブックのドリルなどの基礎学習)があります。@で勝てるようになるには、Bを毎日行い、Aをやって課題を発見し、またBをやって課題を克服していく、という流れが必要です。英語も全く同じだと考えています。
                                
                                
					 2021年度の指導要領施行に伴い、教科書が刷新されましたが、教科書を編集する際に「基礎ドリルを極力排除するよう文科省から指示された」という情報を得ていました。つまり、現在の文科省は、@とAに重きを置いているということです。
					 確かに基礎練習ばかりしていて運用しなければ英語力が身につかないと思いますが、逆に英語を運用する力をつけずして会話や討論を促しても、適切な表現を使うことはできないと思います。先生方からも、「コンテンツ重視の活動を研究し、研究大会等で発表させられるが、スキルがないので思うようにできない」という声をよく聞きます。
                                
                                
					 私も大学で語学の授業を担当していますが、最初はコンテンツ重視の授業をしていました。しかし、意見を書かせるとたくさんミスが出るし、討論させると単語レベルや単文レベルでしか表現できておらず、今は英語のスキルを身につける授業にシフトしています。
					 具体的には、
					1. 音の連結・同化・脱落・崩れを教え、ディクテーションをさせる。
					2. フォニックスを教え、ネイティブとほぼ同じ音が作れるようになるまで音読をさせる。
					(文字→音)
					3. 和訳を見ながら音読させ、語順表指さし音読、そして語順表指さし暗唱をさせる。
					(意味→音)
					4. 6種類のQ&Aのしかたを教える。
					5. 学生同士でテキストの内容についてQ&Aをさせる。
					6. 和文英訳をさせる。
					(日本文を英語の語順になおし、センスグループごとに英語に直していく)
					7. 和文和訳をさせる。
					(言いたいことが言えない、書きたいことが書けないときに、別の表現に置き換える)
					8. 正しく修正した英文を何度も音読させ、暗記させる。
					9. 会話や討論などをさせる。
					という流れで指導しています。
					 言い換えれば、
					<1> 1、2はリスニング力強化のため、
					<2> 3〜5は英文の構造を知り、英語の表現をストックしていくため、
					<3> 4〜6はアウトプットの力をつけるため、
					という3ステップで英語力を高めた上で、初めて9ができるということです。
                                
                                
					 文科省が勧める「使って身につける」ことは、それ自体は間違いではありませんが、「基礎練習なくして応用はできず、応用できなければ音声や文字での即興のやり取りはできない」ことが見逃されているのでは、と危惧しています。