英語が話せるようになるためには、文法の知識が必要です。特に英語の語順を知らないと、単語レベルでしか話せなかったり、適当に単語を並べるだけで意味がよく分からない文になって会話が成り立たなかったりします。
私が中学校で教えていた時は、中1ではTalk and Talkを使って語句を増やしながら、徹底的に基礎練習を行っていました。そして、中2の1学期にライティングをたっぷり行い、それから本格的にスピーキングへと移行していきました。外国の方と英語でやりとりすることを「公式戦」だと考えると、ALTとのインタビューや生徒同士での会話は「練習試合」のようなものです。公式戦や練習試合でそれなりのプレーができるようになるためには、日頃の基礎練習が欠かせません。
中1は英文の構造を知り、英語らしい発音を身に付ける時期で、中2では複文で2層構造の文を使えるようになる、中3では後置修飾を学び3層構造の文が作れるようになることを目指していました。そして、ライティングの採点基準も、語数ではなく、センスグループの数と多重構造を評価していました。そうすることで、中3の3月にはimpromptu speechにおいて“I would like many people to know the fact that people need many things and (that) there are many troubles in the poor countries.”や“I thought raising money is a good way to help them stand on their feet.”など、3層構造の英文が使える生徒が多数出てきました。これは、じっくりライティングを行い、英文レベルを上げていくというプロセスを段階的に経てきたからです。
スピーキングでは、空白時間を作らずコミュニケーションを取ることが求められますので、ミスがあるたびにそれを指摘したり修正させたりはできません。しかし、ライティングではミスを発見したら、それを指摘して修正させることができます。例えば、前述の“I would like many people to know the fact that people need many things and (that) there are many troubles in the poor countries.”は、私からのいきなりの質問に対する生徒の答えだったのですが、2つめのthatが抜けていました。これはライティングであれば指摘できるミスです。そして、そのことを知識として得れば、スピーキングの際にも気をつけるようになります。
いずれにしても、指導なき会話練習では生徒のスピーキング力は伸びません。生徒の会話を録画してフィードバックを与えるなどしなければ、同じレベルで足踏みを続けると思われます。
また、Q&Aの指導も必須です。Yes / No疑問文のみならず、Wh-疑問文の作り方とその答え方、そして主語が疑問詞(句)になる時の疑問文の作り方と答え方、前置詞で終わる疑問文の作り方と答え方などは、中学時代にマスターさせたい事項です。詳しくは、辞書指導ワークショップ等でご説明できればと思います。