私の場合は長期休暇中に次学期の定期テストを完成させておき、学期が始まると同時に授業でその内容を予告して生徒たちに準備をさせていましたので、定期テストのための練習問題をたくさん作りました。そして試験1週間前は毎日のようにその答え合わせをすることになりました。特にリスニングの類題は毎日やりましたし、間違った問題は宿題でもないのにやり直してくる生徒が多く、チェックに時間がかかったものです。まさにうれしい悲鳴でした。
学期が始まる前に試験が完成していて、多少の微調整をすることはあったもののフォーマットは不変でしたので、その目標に向かって授業をすることができましたし、生徒も平常点と定期テストの素点を合わせたものの9割を取れば「5」、7割で「4」、3割未満が「2」、1割未満が「1」という成績のつけ方を知っていたので、定期テストにはこだわっていましたから、試験1週間前に自習などということは絶対に許してもらえませんでした。
問題集やワークブックを生徒にやらせて、間違っていたところを自分で分析させ、なぜ間違ったかを確認させたり、教え合いをさせたり、一人ひとり呼んで問題集の正答率を確認し、次の勉強法を確認したりもしました。
長文問題では、使用しているものとは別の会社の教科書の本文を取り入れたりもしました。結果的にそれが生徒たちに多読させることになりました。しかし、いくつも練習問題をつくるのは大変でしたので、「自分たちでつくってみなさい」と言ったところ生徒たちが予想問題をつくり始め、それをみんなで解いたり私に解説を求めたりという授業によくなりました。
長文問題を解くときは、@見た瞬間に意味がわかる語(I, you, likeなど)、A心の中で音声化して意味を認識できる語、B心の中で音声化しても意味を思い出せない語、C音声化できない、あるいは見た記憶がない語、に分けられます。長文読解問題の点数を上げるには、この中で、@とAの語を増やさなければなりません。
@を増やすためには、繰り返し見たり書いたりすることが必要です。Aを増やすためには、
in
ter
na
tio
nal
のように単語を縦書きしたりして、アルファベットが表音文字であることを普段から生徒に認識させておかなければなりません。英単語が音声化できるためにはフォニックスの指導も有効ですが、かなりの専門知識が必要です。私はカルタで遊ぶうちに文字と発音の関係がわかるような手立てを講じていました。詳しくは、『英語初学者のための 田尻式フォニックスかるた』(ベネッセコーポレーション)をご参照ください。
文字を音声化することができたら、その語の意味を思い出せるかどうかが勝負です。「あー、何か習った気がするけど、意味が思い出せない」というのであれば、知らないのと同じです。それを防ぐのが、試験1週間前の授業です。
定期テスト1週間前はとても大切な時期です。新しい単元に入るのではなく、試験範囲の語句の総復習をします。教師が語句を英語で定義したり、英語でヒントを与えたり、つづりを少しずつ書いていくなどしたりして、どの語句のことを言っているかを生徒に当てさせ、さらにそれがどのページで出ていたかも言わせます。It’s a noun. / It’s a verb. / It’s an adjective. / It’s an adverb. / It’s a preposition. / It’s a phrasal verb. / It’s an idiom. なども加えてやると、文法用語も生徒にとってはヒントを与えてくれる語句になり、抵抗感がなくなります。
このようにして、各語句がどのページで出ていたかを思い出させると、生徒は教科書の各単元のトピックを意識するようになります。「確かその単語は環境問題がテーマの単元で出ていた」とか、「その連語は国際理解の単元で習った」などと思い出すと、そのページを開いて前後関係から意味を確認するようになります。どこで習ったか、どんな文脈で出ていたかを思い出すことが語句の意味を思い出すことにつながりますので、このトレーニングが上記Aの語句を増やしていくのです。
生徒たちと一丸となって彼らがテストでいい点を取れるよう助力することが、この仕事の楽しさの一部でもありました。試験1週間前になってテストを作ったり、試験1週間前に新しい単元に入ったり、放課後に職員会議を入れたりすることは、生徒の学力を伸ばさないばかりか、生徒と教員が一丸となって学力向上を図る貴重な機会を奪ってしまいます。少しでも早く入試につながるテストをつくっておき、そのテストでよい点が取れるような指導をしてください。