Harumi さんは私が一番ペア・グループ学習にこだわったときの生徒さんだから、どうしてもグループ活動が先入観として入っているのだと思います。しかし、それは Harumi さんが通っていた学校が1000人を超えるマンモス校であったため、私が生徒一人ひとりを見ることがなかなかできなくて、どうすればよいのかを考えた末に行き着いた方法でした。当時、富山県の中学校で教員をなさっていた中嶋洋一先生(現・関西外国語大学教授)の実践を追試し、中嶋先生を島根にお呼びしたときに私の授業を見て、アドバイスをいただきました。Harumi さんが中2のときでした。
語学は、本来生徒と教師が1対1で行うものです。以下がその手順です。
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(1) 力がつく(可能であればさらに知的で楽しい)活動を紹介する。
(2) その活動を体験させる。
(3) 生徒はその活動の意義とやり方がわかったら、家庭でその活動に習熟する。
(4) 何日もかけて豊富に練習したあと、生徒は先生のところに行き、その活動に習熟したことを証明する。
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重要表現のアクティビティはたくさんの書籍で紹介されていますし、東京や大阪では研修会がたくさんあり、種々のアクティビティが研究・紹介されていますので、そちらを参考にしてください。教科書本文を使ったアクティビティについては、拙著『田尻悟郎の英語教科書本文活用術!』(教育出版)をごらんください。
なお、中学校で教える文法事項と発音と文字の関係には、以下のようなものがあります。(Harumi さんが教えているのは、英語学習につまずいている中学生と、中学校での学習を消化不良で終えた高校生だと仮定して書いています)これらはさらに下位ディレクトリーがありますので、調べてみてください。そして、全体像をつかんだうえで、これら一つひとつの項目を定着させるためにどの活動を行うかを決め、また折を見て統合的な活動を入れていきます。
中学3年間の全体像をつかみ、中学卒業時にはどんな力をつけてほしいかを決め、そこへ向けて逆算して一つひとつの授業をつくっていくのが流れですから、全体像を見ずして授業をしていると、行き先のわからない各駅停車の電車に生徒を乗せているような気がして、不安に駆られることがあると思います。
文字と発音 |
アルファベットの形と名字
アルファベットの仕事(子音の読み方+母音の基本読みと名字読み)
音の足し算(子音+母音の読み方)
その他の母音の読み方
その他のルール
例外編
聞き取りと発音のコツ
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主語、目的語、補語 |
固有名詞
普通名詞
人称代名詞
指示代名詞
冠詞
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動詞 |
文の形(肯定文、否定文、疑問文、否定疑問文、命令文)
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形容詞 |
数量を表す語
性格、特徴、天気、体調などを表す形容詞
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5文型では無視される部分 |
副詞(句):下線部が答えの中心となる疑問文作り
前置詞句:下線部が答えの中心となる疑問文作り
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数字 |
時刻
年齢、身長、長さ(距離)
誕生日、日付
数を尋ねる
ショッピング
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時を示す表現 |
過去形
進行形
未来表現
現在完了
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助動詞その他 |
能力
依頼
許可
義務
禁止
忠告
提案・勧誘
付加疑問文
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接続詞 |
等位接続詞
従属接続詞
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文型 |
いるある
be動詞以外のSVC
SVOO
SVOC
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不定詞 |
名詞的用法
副詞的用法
形容詞的用法
仮主語
SVO1O2(不定詞)
所要時間
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動名詞 |
主語の場所で使われる動名詞
目的語の場所で使われる動名詞
前置詞のあとで使われる動名詞
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比較 |
比較級
最上級
同等比較
倍数
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態 |
受動態
感想表現
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後置修飾 |
普通名詞の後置修飾
…thing, …one, …bodyの後置修飾
間接疑問文(疑問詞の後置修飾)
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その他(場面) |
道案内と乗り物案内
電話
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感嘆文 |
how
what+名詞
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活動は、個別、ペア、グループなどの形態がありますが、個別指導では教師とペアになってやる活動以外は、基本的に個別活動を行います。と言っても、プリント学習をさせ、その答え合わせをやるという個別学習では、なかなか力がつきません。また、個別学習のために来た生徒が、そこで初めてプリント学習をしたり問題を解いたりしている間、教師はずっと待たないといけません。それは効率が悪いですし、待っている間、教師は眠気がついてきます。ですから、家でできることは家でやらせ、Harumi さんのところに来たときは、個別指導の場でしかできないことをやるといいと思います。
個別指導では、授業の前半は上記(1)、(2)を行い、後半は(3)の成果を測る(4)の活動を行うことをお勧めします。また、Harumi さんが中学生のときに体験したように、自学帳を持たせて(3)の部分で使わせ、チェックしてあげるといいと思います。いずれにしても、生徒さんが「この活動は力がつく」と納得することが大切です。そういう活動を集めてください。