高校の先生方にぜひやっていただきたいのが、中学校の教科書分析です。中学校の検定教科書は6種類しかなく、どれも扱っている文法事項はほとんど同じですから、どれか1種類でもいいので手元に置き、中学校での学習内容を確認してください。そして、各生徒が中学校のどの時期につまずいたかを確認し、個に応じたリメディアル教育をしてあげてください。中高の橋渡し教材が渡しっ放しになることはよく耳にしますが、それでは生徒の学力向上につながりません。
生徒の英語力を測るには、ライティングが一番です。ライティングをさせると、どのような勘違いや誤解をしているかがよく見えます。私も大学で教養科目の英語を担当していますが、それぞれの学生の英語力を測る活動を数種類入れ、個別に話し合い、それぞれの学生のレベルに応じてアドバイスを与えています。また、教員免許取得のための科目を取っている学生には指導案や教材を作成させますが、その中で英語の間違いを探し出し、個別に指導するようにしています。そこで見えるのは、特に中学校でライティングを経験しなかった学生や、書いても間違いを指摘・指導されなかった学生は、中学校英語を理解しないまま教員になろうとしているという事実です。
一斉授業に慣れていて、集団の中の一人として自分を埋没させている学生は、ライティングやスピーキングで個別指導され、間違いを指摘されると、英語学習意欲にスイッチが入ります。厳しいけれど見てもらえる、指導してもらえる、そして伸ばしてもらえると思ったら、大学生でもしっかり学習し始めます。そして、個別指導で高い能力を発揮する学生がいると、その学生と自分を比較して焦ったり、落ち込んだりする者も出てくるので、励ましながら具体的な方策を与え、一人ずつ伸ばしていきます。英語が苦手で嫌いな学生も希望を持てて、知的に楽しめる授業を作ることが我々の使命ですから、その部分を研究してみてください。英語の授業の大原則は、以下の通りだと思います。
「知的で楽しく力のつく活動を用意し、家庭学習をしたからこそ報われる授業をし、個別に生徒の到達度を測り、不足している部分を発見し、次の学習を具体的に提示する」
次に、授業プリントですが、どういうプリントかわからないので有効なアドバイスはできませんが、そのプリントをやって学力が伸びたという体験をさせてあげなければなりません。生徒にとって、授業中に指名されてプリントに関する答えを言えたら終わりというものに過ぎないのであれば、プリント学習の成果は出ません。先生が今一番にすべきことは、そのプリントをどう使えば生徒の学力が伸びるかを研究することではないでしょうか。
また、毎月テストがあるということなので、そのテストでいい点を取るにはどうしたらいいかということも考えてください。(そのテストに信用性があるかどうかは別ですが)最初に到達目標があり、次にその到達度を測るテストがあり、そしてその到達度を少しでも高めるために授業があります。授業プリントはその目標達成のために作成されているはずですから、プリント学習とテストは直結しているはずです。
成果が出れば、生徒はついてきます。成果が出ないうちに英語の魅力を語っても、生徒は腑に落ちません。英語の魅力は自らが感じるものであって、説得されるものではありません。
発音指導はコミュニケーションのための音声発信が正しく認識されるものにするために行いますし、音読指導は暗記と理解の促進という目的があって行う活動です。とりあえず体を動かそうという安易な考えでやるものではありません。発音指導は、できて嬉しかったという体験をさせなければなりません。具体的には、『テレビで基礎英語』9月号(NHK出版)のTipsとAthletic Englishのコーナーをご参照ください。中学生向けの活動ですが、大学生でもこれができたら喜びを爆発させますから、況んや高校生はや、だと思います。また、音読指導は、12月号、1月号をご参照ください。