田尻先生
Q.38
田尻先生はじめ、いろんな先生のお話をお伺いしながら、私は以前と比べ、授業の中で活動を多く取り入れるようにしました。英語による活動の中で、ペアワークを行う機会を多く取り入れていますが、生徒の学力差・人間関係などもあり、効果的なペアワークを組めている実感があまり持てていません。ペアのつくり方、ペア活動が効果的だと思われる学習について、田尻先生のご経験からご教えて頂けないでしょうか?現在は、生徒に自由にペアを組ませたり、前後斜めでやったり、様々な形でペアになってもらっています。英語の授業だけで解決できる問題ではないかもしれませんが、まずは、私ができることからやりたいと考えたいと思っております。どうかご指導頂ければと思います。  

 効果的なペア学習をさせるためには、ペアの組み方がポイントとなってきます。ペアのつくり方の詳細については、『英語のディベート授業30の技』(中嶋洋一著、明治図書)や『(英語)授業改革論』(田尻悟郎著、教育出版)をご参照ください。

よく先生方は隣に座っている者同士でペアを組ませたりしておられますが、ペア活動の成否には、学力のバランスや人間関係、性別など様々なファクターが影響しますので、隣に座っている人とペアを組ませるとそれらが偶然性にゆだねられてしまいます。中嶋先生は、クラスの半分をリーダーにされ、残りの生徒にリーダーを選ばせることで選んだ者の責任と、選ばれた者の自尊心を引き出していかれます。

1999年に中嶋先生をお招きして研修会を開いた際に、翌日私の授業を見ていただき、ペア学習、グループ学習の仕方に関してもアドバイスをいただきました。その当時、中嶋先生のご著書を参考にして学び合いのシステムを構築しておりましたので、中嶋先生から合格のお墨付きをいただいたときには、とてもうれしかったです。

その学校は学年9クラスの大規模校でしたので、人間関係づくりには腐心しました。生徒の気持ちや人間関係、相性などを調べ、担任の先生に相談し、細心の注意を払ってペアをつくりました。ペアはひと学期の間は固定ですので、途中で人間関係が崩れたら英語の授業そのものが嫌になってしまいます。ですから、人間関係を良好に保つ努力をするよう、念を押しておかなければなりません。将来生徒は英語を必要としない環境で生活する可能性はありますが、人とうまくやっていかなくてもよい環境で生活する可能性はきわめて低いのであり、英語力を高めることより人間関係調整力を高めることの方がずっと重要であることを、ペアやグループをつくるときに伝えておかなければなりません。

言葉は人と人をつなぐ道具になりますが、人を傷つける武器にもなります。言葉をどう使うかは、その人の人生に大きく関わってきます。それが英語を学習する意味であり、英語はスキルを教えるだけの教科ではありません。

先生がおっしゃるように、ペア・グループ学習は、授業中だけではなく、学校生活すべての営みの中にその成否のカギがあります。そして、教師集団の決意と継続的な指導なくして、ペア・グループ学習の成功はありません。つまり、ペア・グループ学習の成否は、教師集団の姿勢、そして進路指導(進学指導ではなくて、生き方指導)の成果が反映されるのです。

温かい心を持った教員団は、生徒の心の扉を開け、生徒同士もお互いを気遣うようになります。幸せな人生を送るためには人間関係調整力が不可欠であることを知れば、生徒も何とか人とうまく関わろうと努力し始めます。我々英語教師は、その第一歩が職員室での同僚との関わりと英語の授業の中にあると思って、我が身を正し、誠意を尽くして子どもたちに接していかなければなりません。

ペア・グループ学習が活性化しないときは、「ちゃんとやりなさい」と叱りつけるのではなく、うまくいかない原因を生徒の観察と生徒との対話の中から見つけ出し、対応してみてください。

 
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