教科書を開き、いきなりCDをかける先生がいらっしゃいますが、それは、文字を心の中で音声化して意味をとろうとする姿勢を奪ってしまう可能性があります。入試の長文読解などでは、I、you、like、playなど、「見た瞬間に意味がわかる単語」と、「心の中で音声化することで意味がわかる単語」、そして「最後まで意味がわからない単語」に分かれます。そのうち、「見た瞬間に意味がわかる単語」と「心の中で音声化することによって意味がわかる単語」をつなぎ合わせ、全体像を推測し、設問に答えるという作業をします。入試では、長文読解問題を解くときに、放送でその長文を読み上げてくれるようなことはありません。したがって、生徒は文字を音声化する力を求められるのです。教科書を開いた次の瞬間にCDをかけることは、文字を音声化する練習をさせないことに等しいのです。
教科書を開いたらまず黙読させ、その後CDなどで脳内の音声化が正しくできたかどうかを確認するのはOK(リーディング)です。教科書を閉じたままCDを聴いて内容把握し、その後教科書を開いて文字で理解度を確認するのもOK(リスニング)です。しかし、教科書を開けた直後にCDをかけるのは、リーディングの力もリスニングの力も伸ばさないのです。
さらに言えば、音読は英文の意味がわかっていてこそ効果がありますし、あるいは、音読するうちに理解が深まるという計算のうえで実施してこそ意味があります。教科書本文の意味を確認することなくCDを聞かせ、その直後にCDや教師のあとについて音読させることは、ほとんど効果はありません。これは、漢文や古文を意味もわからず暗唱しようとするのと同じです。