ティーチャー制度は教師が一人ひとりの生徒の到達度をチェックするのが大変なとき、全ての課題を終えた生徒に他の生徒の到達度をチェックしてもらうための制度ですので、注意が必要です。すなわち、生徒が生徒の成績をつけることにもなりかねないからです。したがって、私は中1の1、2学期しかティーチャー制度を採用していません。その頃の英語は非常にシンプルで、生徒同士にチェックさせても問題ないからです。それに、たくさんチェックしてもらう機会を増やし、点数を稼がせ、「自分は英語が得意だ」と思わせる狙いもあります。得意な教科は得意なままでいたいと思えば、努力も継続する可能性が高まります。
しかし、現実はそんなに甘くはなく、中1の3学期は英語と格闘するようになります。ですから、ティーチャー制度を減らし、ペアでの助け合い学習を増やしていき、それを教師が支援していくというスタイルに変えていきます。もちろん、1年3学期も教科書の音読テストや『Talk and Talk』(正進社)のドリルなどはティーチャー制度を使って相互チェックをさせますが、それは成績に入れず、学期末にそれらを統合した活動を用意し、配点を高くして私かALTと1対1で勝負させるテストをしていました。
数学でティーチャー制度を取り入れるのなら、計算の解答チェックなどが考えられますが、その部分で間違いを見逃すと後々影響が出ますので、ティーチャー役の生徒の背後に教師が立って一人ひとりの採点と解説をチェックするという、ティーチャーの管理が必要です。関数や図形などでは、ミスを発見したティーチャーがどう説明するか、どんなヒントを与えるかもチェックしてください。そこで、素晴らしい説明やヒントを与えている生徒を見つけたら、思い切りほめてあげてください。
ただし、図形などは数学的思考力が高い生徒とそうでない生徒との差が出ますので、教える方は「なんでわかってくれないの?」という気持ちになりかねません。ティーチャー制度が目の前のクラスメートにきつい言葉を投げかけないよう、注意してください。そして、生徒同士のチェックが正しく機能していることを確認したら、教師はティーチャーに答えをチェックしてもらうところまでいかない生徒を支援していきます。
ティーチャー制度については、拙著『(英語)授業改革論』(教育出版)第6章、PP.140-163に詳しく述べておりますので、ご参照ください。