英語に対する学習意欲が感じられない生徒は、いくつかのタイプに分かれます。
@他教科も含め、学習に対する意欲が低く、家庭ではゲームやマンガな
ど、自分が好きなものに時間を費やし、家庭学習はほとんど行わないの
で英語がわからない。
A学習の必要性は感じているが、ついつい楽な方に流されてしまい、家庭
学習が疎かになっており、英語に苦手意識を抱いてしまっている。
B授業を理解しようとするが、ついて行けず途中で挫折してしまい、意欲を
失っている。
C授業に魅力を感じず、英語学習に興味を持てないでいる。
D教員に反発している。
先生の場合、その子のために特別な教材を用意なさっているので、Dではありません。また、ゲームは楽しんでいるようですので、Cでもないと思われます。そうなると、中1のときにBに陥った可能性があります。中1におけるBの原因としては、
(1)文字が読めない、書けない(1学期)
(2)一般動詞を含む文の疑問文、否定文が理解できていない(2学期)
(3)動詞、形容詞、副詞(句)、前置詞句、疑問詞(句)などの語句を覚えてい
ない(3学期)
(4)現在(単純)形、現在進行形、過去(単純)形、canなど、動詞の語形変化
や動詞句がわからない(3学期)
などが考えられますが、その子がどこでつまずいたのかを過去にさかのぼって調べてみてください。
問題に直面したときは、「現象→原因分析→対応策→対処→観察」という流れが解決のために必要ですが、その中で一番大きなポイントは「原因分析」です。1年生のときの授業内容や方法、形態などに関する情報を集めることで、その子たちがなぜ英語学習に対するモチベーションが低いのかを推し量る一方、本人たちと面談して原因を究明されると、善後策がより有効になると思います。ただし、「対応策」を練る段階では、3年間の学習内容がすべて先生の頭に入っており、3年間の到達目標が明らかであることが必要になります。
Aのタイプの生徒は、まるでマラソンのコーチがつきっきりで選手を走らせるように叱咤激励する方法もありますが、授業で成功体験を積み重ねてあげると、家庭学習も頑張ろうという気になることがよくあります。そうなると、あとは独り立ちするよう励まし続けることです。その子にとって英語は将来必要ではないかも知れませんが、苦しいことに立ち向かったり、怠け心と闘ったりする経験は、将来どんな道に進んでも財産になることを伝えます。「やらないといけないことは、わかっているんだけど。」と言いながら葛藤する生徒を応援し続けるのは、教師として楽しみでもあります。それができるようになることこそ最大の成功体験であり、できるようになった生徒の頼もしさを感じるのは、教師冥利に尽きます。
問題は、@のタイプの生徒です。これはなかなか改善できません。私もそういう生徒にたくさん出会いましたが、中3の冬休み前になってやっと「英語を教えてください」と頼みにくるAのタイプの生徒にひっついてくるのが関の山でした。でも、それでもいい方であり、最後まで学ぶ意欲が見られない生徒もいました。私の思いは伝え続けましたが、あとは焦らず最後まで門戸を開けて待つようにしていました。
一方で、彼らが「英語の授業は嫌いではない」と言ってくれることを目指しました。そのためには、funだけではなくinteresting な内容と、彼らが何かをaccomplish する喜びを味わえるよう、周囲の生徒に協力してもらうことが不可欠です。私の授業風景を紹介してくださったテレビ番組で「英語なんか大嫌いだ」と言っていた生徒も、フォニックス・カルタは嫌いではありませんでしたし、インタビューテストで初めて合格したときは「やった」と言って喜び、その日の放課後から自分と同様に英語が苦手な他クラスの友達に教え始めました。
彼らはいずれ、自分の仕事で工夫を始めます。考えなければ、失業するか、倒産するかという状況を経験するからです。今は全く勉強しない生徒も、必ず頭を使う時が来ます。そのときに、人を陥れるために頭を使うのか、自分や家族が喜ぶのと同時に人に喜んでもらうために頭を使うのかは、それまでにその子たちに接してきた大人にかかっています。私もそのうちの一人として、生徒の将来のために何かプラスになることをしたいと思って、彼らに関わってきました。ですから、英語ができるようにしてやることより、できるようになってほしくて誠意を尽くす大人の姿を見せ続けようと思っていました。
生徒の成績が伸びるためには、教師の努力に生徒が呼応してくれなければなりません。しかし、もしそうなっても結果が出るとは限りません。それぐらい、我々が求めているものは、深奥で実現が困難なものです。焦らずいきましょう。
最後に、英語が苦手な生徒がやる気になったときに有効な具体的な手立ては、フォニックスと和文英訳を通した語順指導、語句暗記クイズです。