まず、TTのDos and Don'tsに関しては、拙著『(英語)授業改革論』(教育出版)の P.79-80をご参照ください。
生徒が日本語を理解していないというのは、最近よく見られる傾向です。これは、子どもの頃に人と関わっていなかったり、読書をする量が少なかったり、小中で作文指導などを十分に受けなかったことなどが原因として考えられます。そういう問題は、一朝一夕に解決するものではありません。
私の場合、生活ノートや作文などで添削指導をしましたし、終礼時に1分間スピーチをさせました。1分間スピーチでは、まず3つのトピックを選ばせて20秒ずつ話すということをやらせます。慣れてきたら、2つのトピックについて30秒ずつ、そして最後は1つのトピックについて60秒語るというふうに、ハードルを上げていきます。最初は下書きをする生徒も多いので、そこで指導をします。1分間スピーチは、感動的なものがあったり、大爆笑するものがあったりで、クラス経営にも大いに貢献してくれます。朝読書を実施している学校では、生徒が活字に慣れてきますので、さらに効果が期待できます。
いずれ社会に出たら、契約書などをしっかり読まないと詐欺に遭うこともあります。日本に住む以上、日本語を理解しないと困ることがたくさんありますので、それを自覚させることが第一歩となると思います。英語が苦手な生徒は、英語が必要ない職場へ行けばよいのですが、日本語が必要のない職場は日本にはほとんどありません。私の経験からも、日本語が駆使できない学生は、入社試験でことごとく不合格になります。ですから、日本語がいかに大切であるかを感じてもらうためには、就職のエントリーシートを書かせるのも一案です。
いずれにしても、本人がこれでは危ないと思わなければ、前には進まないと思います。私の教え子の中にも、中学校時代は国語も英語もからっきしだったのに、30代、40代になると見事な挨拶をしたり、はがきや手紙を書いて送ってくれたりする人たちがいます。彼ら曰く、「中学校時代はなーんも考えてなかったけど、社会へ出ていかに勉強が大事であるかがよくわかった。今は昔のようなアホとちゃうで!」だそうです。
その生徒さんたちが言語力を高めていくためには、インプットをしたのちアウトプットをさせて添削し、訂正させるという繰り返しが必要です。これは、日本語も英語も同じです。つまり、先生方がどこまでつきあってやるかで、生徒たちの言語力は決まります。効果的な指導法とは、時間がかかる指導法であり、短時間で効果的な指導法はあまり存在しないことも、我々は自覚する必要があると思います。
さあ、楽をすることはあきらめて、とことん生徒につきあってやりましょう!