田尻先生
Q.22
田尻先生が実践されていた「『Talk and Talk(正進社)』を用いたインタビューテスト」を実施しているのですが、なかなかうまくいきません。私の場合、「ALTがAさんの質問をし、Bさん役の生徒が答える。そのあと役割を交代し、生徒がAさんの質問をし、Bさん役のALTが答える。」という形式で行っているのですが、田尻先生が行っていたインタビューテストの詳細を教えていただけますか?  

 私が行っていた「『Talk and Talk』を使ったインタビューテスト」は、ALTと生徒が役割分担をして行うという形式ではありません。教師が指定した問題を、生徒が一人で語句を入れ替えて全ての文を英語で言い、その直後にその英文を和訳するというやり方です。ダイアログのページも、生徒が一人でAさんとBさんの役をこなします。教師やALT、あるいはティーチャー役の生徒はそれをじっと聞き、ミスがあればすかさず指摘します。

 以下は2006年度中学1年3学期のインタビューテストの詳細です。


 和訳させることには賛否両論あるでしょうが、1年では文が短いので、和訳の弊害はあまりないと考えています。“Where do you live?” と “Where are you from?” の区別がついていない生徒はたくさんいますし、中2,中3も過去形と過去進行形が全く同じ訳になる生徒や、受動態と能動態を混同している生徒など、和訳を見ると、本当に理解しているかどうかがわかります。

 また、現在完了の継続は、和訳の妙を楽しむパートです。以下は、私の生徒の訳です。
A: Have you been married for a long time?
 「あなたたちは結婚して長いですか?」
B: Yes, we have. We have been married since 1990.
 「はい。私たちは1990年以来、連れ添っています。」

 インタビューテストがスムーズにいかないのは、十分な筆記練習と口頭練習が不足している可能性もあります。私は『Talk and Talk』を以下の手順で扱っていました。

@モデル・ダイアログの説明は、口頭と文字で。板書をするのは時間の無駄。それを写させても、使わなければ意味がない。モデル・ダイアログの解説はプリントにして渡し、生徒がドリルの最中に間違う度にそれを読ませる。

A授業で数問口頭練習をしたあとに、ノートを開いて書かせる。グループで口頭練習をしておけば、slow learnersも少しやり方をつかむので、そのあと書くことによってさらに理解が進む。『Talk and Talk』はスピーキングとライティングの教材だが、口頭練習だけでは定着は望めない。書かせることが大切。書かせてみると、中1は驚くほど間違う。それを指摘し、訂正させるプロセスを飛ばすと、テストで悲惨な結果となる。

B中1の5月は授業中に『Talk and Talk』をたっぷり書かせ、家庭学習へとつなげる。『Talk and Talk』は家庭学習用教材であり、生徒が「英語はどんな勉強をしていいかわからない」という言葉を言わなくなるために、授業中に使い方を体験させる。

C正しく書けるようになるまで、繰り返し書かせる。(1年1学期は書くことが大嫌い!)

D英文の下には和訳を書かせる。

Eフォニックス・カルタと並行して進めると、字を書くときの負担が減り、より効果的。(田尻式フェニックスかるたはこちらより)

F進みたい生徒は進ませる。

Gライティングからスピーキングへ。各ページでライティングに合格したら、以下の「ライティング合格認定カード」を渡す。生徒はインタビューテストを受けるとき、このカードを提示してライティングはすでに合格していることを証明する。


H正しく書けたものを口が覚えるまで音読させる。

I十分に音読したら、インタビューテスト(ポイント制で、受けた回数が関心・意欲の成績に入る)を実施する。基本的に個別で行い、ダイアログでも一人二役をする。

J豊かなコミュニケーション活動は、中1では3学期からで、それまでは基礎基本を徹底的に鍛える。

K2006年度中学1年生は、1学期Part 13まで。

L進度は教科書に合わせて(でもよい)。

Mティーチャー制度を活用して、インタビューテストの数をこなす。ただし、友だち同士でのチェックも点数化してやるのは、中1の2学期まで。

N中1の3学期からは友だち同士でインタビューテストを行わせ、合格したらスティッカーを与える。ただし、それは点数化しない。教師との個別インタビューテストは、それらを何ページかを統合したもので行うので、生徒は全てのページを練習しなければ高得点を得る可能性が下がる。

 『Talk and Talk』を使ったインタビューテストは、『生徒の心に火をつける―英語教師田尻悟郎の挑戦』(教育出版)にも記述がありますのでご参照ください。

 
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