実は高校の先生方の悩みをお聞きすると、よく「入試問題集を使った授業が面白くない」とおっしゃいます。教科書などで英文をインプットすることなく問題集をこなす授業は、教える方も学ぶ方も苦しい授業になりがちです。本来は教科書などでたくさん英文に触れ、それらが定着したか、あるいは使いこなせるようになったかを自己診断するために問題集は使うものなのですが。
教科書のいいところは、物語や論説文など、流れのある文章がたくさん載っているところです。ご質問いただいた方は、そういう文章を読むことが好きなのでしょうね。とてもいいことだと思います。それならば、書店に行き、自分で教科書ガイドを買ってこられてはどうでしょうか。教科書ガイドには、本文とその訳、解説などがついていますので、わからないところはチェックできますよ。
もし学校で教科書を使ってほしければ、たくさんの生徒の声を集めて先生に訴えるという方法があります。しかし、教科書を使うことになっても、多くの先生方が和訳と文構造の分析などを中心とした授業をなさるので、結局はガイドブックを読むのと同じ授業になってしまう恐れがあります。
私は、高校では以下のような手順で授業を行えばよいのではないかと考えています。
1. 教科書の内容を独力で理解するよう努める。わからないところがあれば、
友だちに聞いたり、ガイドブックを参照したり、先生に聞いたりして解決す
る。
2. 教科書を様々な手法で音読する。
3. 教科書の本文で、自分にとって未知なものやチャレンジングなものを暗記
する。既習事項でマスターしていると思うものまでを暗記する必要はない。
4. ガイドブックの和訳を見ながら、英文を復活させて書いてみる。
書けない語句があれば集中的に練習する。
5. 3で暗記した文の語句を入れ替えて新しい文を作り、使用する場面を想定し
てみる。
6. それらの文を含め、教科書本文が応用できるようになったかどうかを、
先生やALTを相手に試してみる。
7. 問題集をやって、自己診断テストをする。
8. できなかったところや、わからなかったところを、友だちや先生に聞く。
9. できなかったところや、わからなかったところを、どう克服するか、先生と
相談する。
このように、私自身は教科書を必要だと思っています。また、東京学芸大学の金谷憲先生の名著の1つに、『教科書だけで大学入試は突破できる』(大修館書店)があります。その帯には、<「教科書をやっていたって、入試には対応できない」そんな思い込みは、今日限りで捨ててください!>と書かれていますので、ぜひ高校の先生に読んでいただきたいと思います。