生徒が自学に取り組むようになるためには、いくつかポイントがあります。
1.成績のつけ方が明らかになっている
2.進度表やスティッカーなどを用意する
3.一つひとつの学習の目的や意味を理解している
4.伸長感がある
5.教師の手書きのコメントがある
自学を継続してやるためには、何のために勉強しているかを生徒が理解していることが必要条件です。そのためには、まず成績のつけ方を生徒に周知徹底します。
私の場合は、初めて受け持った学年に対しては、基礎基本の力をつけるために徹底的ににドリルをしましたが、それらを一つひとつクリアするごとに点数を与え、さらにその書きの成績のつけ方も公表していました。生徒は合格して 進度表にスティッカーが増えるたびに喜んでいましたし、よく電卓を使ってその時点での自分の成績をはじき出していました。成績のつけ方がクリアであることは、学習の対する大きな動機付けになります。
進度表がスティッカーで満たされたら、教室に貼っていきます。そうするとそれまでのんびりしていた生徒が焦り始め、家庭で自学に取り組む生徒が増えてきます。
次に大切なことは、今やっているドリルが将来どのような力になるかを生徒に納得させることです。先輩や他校の生徒の作品やビデオを見せることも、その手段の1つです。そのためには、3年間で生徒にどのような力をつけたいかという具体的な目標を教師自身が持っていなければなりません。「面白そうだな。自分もやってみたい」とか、「自分もあんなことができるようになりたい」と思ったとき、生徒は動き始めます。
もう1つは、生徒が伸長感を持つことです。自学帳のチェックは大変です。生徒は同じようなところでつまずきますので、生徒一人ひとりのノートに解説を書いていると、手も頭も心も疲れてしまいます。ですから、私は生徒が共通して間違うものを整理し、一覧表を作りました。そして、生徒が間違ったところに下線を引き、間違い番号を記していました。そうすると生徒はその番号のところに書いてある解説を読んで、「あ、そういうことか」と納得し、青色のペンで修正してくるのです。それに赤丸がついて帰ってくると、生徒は満足するのです。これが伸長感です。自学をするうちに、「わかったぞ!」という気持ちが湧いてくることが、自学を継続する大きな要因となります。
最後に、先生のコメントです。頑張りを称え、さらなる努力への意欲を引き出すコメントを書くことが大切です。自学ボックスにノートを取りに来た生徒の多くが、その場で自学帳を開きます。どんなコメントが書いてあるか知りたいのです。そして、次に何カ所間違ったかを見ています。間違いが少なかったり、訂正したところがあっていると、にこにこしています。
自学は生徒にとっても教師にとっても大変な作業ですが(自学は楽しいという生徒もかなりいますが)、お互いが同じ目標に向かって手を携えあって努力する場でもあります。私は、自学を通して生徒との信頼関係を作っていきました。