田尻先生
Q.9
私は高校で講師を始めて2年目になる者です。この4月から1年生を担当しています(ちなみに、昨年も1年生でした)。そこで、生徒と初めて顔を合わせる第1回の授業で何をするべきかいつも迷います。昨年、今年は授業の進め方を説明する、ガイダンスのような時間にしたのですが、教科書を使って学習を始める前の段階で、他に何かするべきことがあるのではないかと考えています。田尻先生の場合はどのようなことをされますか。ぜひ教えてください。  

私は高校で教えたことがないので、高校での第1回の授業で何をすべきか知りませんが、先生のように授業の考え方や流れ、教材の使い方、そして家庭学習の仕方を説明するというのは、一般的だと思います。授業はシステムが確立されなければならないので、最初はその部分に時間をかけるのは当然だと思います。

インターネットでサイトを立ち上げておられる学校や先生方の実践例を拝読すると、最初の授業からオールイングリッシュでやっておられる方もいらっしゃり、とても参考になります。中学校での私の授業開きは、以下のようなものでした。なお、使用言語は日本語です。

1. 公立高校、高専、私立高校の入試問題を見せる。約3年後には、これらが解けないといけないことを伝えて驚かせる。そして、そのためには文字が読めて書けなければならないこと、聞き取りができなければならないこと、語句を知っていなければならないことなどを伝える。
2. 授業に臨む心構えと、約束事を伝える。
3. 先輩の中3の2、3学期の姿を映像で見せる。
4. 先輩の自己表現ノートを見せる。そして、田尻の言うことを聞いて真面目に勉強すると、みんなこんなことができるようになるよと言う(どういうふうに勉強すれば先輩のようになれるかは、後日教える)。
5. 英語でコミュニケーションをするとき、必要とされるものの優先順位を言う。
@ 世界に通用する発音
A 意見、アイディアなど、話の内容の豊かさ
B 英語の表現力と理解力
英語でコミュニケーションを取るためには、もちろん通じる英語を読んだり聞いたりできないといけないし、話せたり書いたりできないといけないが、話したり書いたりするためには、意見やアイディアがないといけない。それに、発想力が乏しいと、社会へ出てから活躍できない。したがって、英語が使えることより、意見やアイディアを持つことが大切である。そして、考えを構築し、それを英語に直すことに意識が集中していると、最初に身につけた英語の発音が出てしまうので(まるで田尻にとっての出雲弁のように、夢中になると体に染みついた発音が出てくる)、まずは世界で通用する発音を身につけておくことが先決である。
6. 世界で様々な人々とかかわっていくためにも、まずは世界で通用する発音を身につけようと呼びかけ、『Talk and Talk Book 1』(正進社)の日本語の語いに外来語として入っている英単語の発音の勉強に入る。

高校では、中学時代にどれぐらい英語を理解していたか、どこでつまずいたかなどを調べる必要があると思います。そこを押さえて、高校での授業についてこられるよう、どのような家庭学習をすればよいかを個別に話し合う必要があると思いますが、残念ながら高校の先生方の多くは中学校英語を研究しておられないので、つまずきの原因や時期をご存じなく、その対応ができていません。入学試験や入学後の診断的評価から、それぞれの生徒の中学学習内容の到達度は出てくるわけですから、授業開きのあと、一人ひとりと面談してあげてください。

また、家庭学習の仕方を体験することも大切です。何をどのように家庭学習するのか、それをやったらどういう学力がつくのかなど、先生が考えておられる家庭学習の意義や魅力を語り、体験させます。家庭学習課題は、生徒にとって「力がつくと確信できる」ものであり、「他教科とのバランスで実行可能なもの」でないといけませんし、「やり方がわかる」ことが実行の前提条件となります。さらにそのうえで、家でできる学習と学校でしかできない学習を確認させ、家でできることは家でしてくるように伝えます。

そう考えると、授業開きの1時間ですべてのガイダンスと生徒を理解することは難しいと思われますので、数時間や数週間を授業開きの時期ととらえ、システムの確立と生徒理解に費やされるといいと思います。

 
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