田尻先生
Q.15
中学校に勤務しています。田尻先生は、普段の家庭学習に自学帳を取り入れていらっしゃいましたが、長期休業中はどのような課題を出していましたか?  

 私は中2の夏休みを除いて、長期休業中は宿題を出しておりませんでした。学生時代に、「8月は暑すぎて勉強が手につかないので夏休みがある、年末年始は家のことをしないといけないので冬休みがある、3月末から4月の第1週にかけては、1年の疲れを取り次年度に備えるために春休みがある」と聞かされていたので、その間に宿題を出されると矛盾を感じていました。高校時代の夏休みの補習は最悪で、暑いうえに本来休みである日に強制的に学校に出されるので、休みを返上してまで補習をしてくださった先生方には申し訳ないのですが、家に帰ってからなかなか勉強する気になれませんでした。自分で選んで出席した補習ならば、モチベーションが違っていたかもしれません。学校で行われている強制的な長期休業中の補習と、予備校で高いお金を払って受講する補習との違いは、そこにあると思います。

 私の場合、各学期が始まるまでに定期テストのスペックを完成させておき、そのテストでよい点を取ってもらうために学期の授業を頑張っていましたし、生徒にも努力を促して(強制して?)いたので、長期休業中くらいお互い休めばよいのではないかと思っていました。授業期間中は徹底的に勉強させて長期休業中はゆっくりさせてメリハリをつけ、その間に次の学期の準備をするというのが私のやり方でした。

 なのに! 夏休み中に自学をたくさんやり、休み明けに自学帳を提出する生徒がいたのです。これは大変でしたが、彼らの努力に報いるために必死でチェックしました。

 中学2年の1学期は、1年の3学期に学習した語順を定着させるために徹底的にライティングをさせていました。4〜5月は頭が痛くなるほど語順を無視した英作文が出てきます。彼らのノートには私の「語順!」といういらだちに満ちた短いコメントが書かれており、6月になってやっと語順のミスが減るようになりました。そして期末テストが終わった7月前半に、want to, will, I think, because, to不定詞、if, whenなどを統合した“My Dream Trip”(夢の旅行)を書かせていました。それをALTと協力して学期中に添削して修正したものを手渡し、夏休み中に100回音読をして暗記するのが夏休みの宿題でした。

 これは、2年2学期の最初の活動である、Good Listenerの布石でした。Good Listenerは、話し手が言ったことを簡単にメモし、その後メモを手がかりに相手が言ったことを復唱するという活動です。これはディベートやディスカッションにつながる活動ですが、これを行うためにはスピーカーを育てておく必要があります。そこで1学期の終わりにMy Dream Tripを完成しておき、夏休み中に暗記してもらっていたのです。

 長期休業中に宿題を出す場合、その意味と意義を生徒がわかっていなければなりません。できれば、知的で楽しいものがよいですね。多読もよいと思いますが、面白くない文章をたくさん読ませられると読むこと自体がいやになってきますので、気をつけてください。

 なお、学期中に終わらせておくべきことが終わっていない場合、それを長期休業中の宿題にするのは全く構いません。英語は積み上げの教科ですから、サボった時点で前には進めなくなることを伝え、努力を促します。ついついやるべきことを後回しにしてしまう生徒に一番効いたのは、ペアやグループのメンバーが次のように言ってたしなめたときでした。「英語はサボった時点で終わり。このままじゃいけないと思って英語をやり直すとき、結局サボったところへ帰るしかない。だからこそ、1つずつクリアしておいた方がいい」と友だちに説教する生徒は、「小悟郎」と言われていました。

 
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