平成23年度から小学校で英語活動が本格的に始まり、制度上では全国一斉に同じような内容の授業が展開されることになりました。したがって、これから中学校に入学してくる生徒は、今までほど学校間格差がなくなってくることが予想されます。
一方で、小学校で英語が嫌いになったり、苦手になったりする児童が少なからずいることは事実ですし、塾や英会話教室などで英語力をつけている児童もいます。しかし、このような好みや得手不得手の個人差は、小学校で既に学習している国語や数学(算数)、社会や理科ではよく見られることであり、それらの教科の先生方が、その問題の解決のためにどのような工夫や努力をなさっているかを知れば、解決の糸口が見えてくるのではないでしょうか。
まず、小学校で英語が嫌いになる児童は、「英語がわからない」「覚えられない」「文字が読めない、書けない」、あるいは「授業が面白くない」などの原因を挙げています。これらは、中学生が英語嫌いになったり苦手になったりする原因でもあります。ですから、そういう生徒を担当した先生方は、少しでも英語がわかるようになるための工夫をされたり、生徒が練習する中で少しずつ覚えられるようになったという、成功体験を積み重ねるような授業をされたりするとよいでしょう。
英語が得意な生徒のためには、知的な授業が求められます。中1の初期に習うようなことは既にマスターしているかもしれませんが、それらの学習においても、生徒が興味を引かれるような知的な授業をすることは十分可能です。
私が中学校教員時代にやったことは、フォニックスや語順の知識をカルタやカードで体験的に身につけていったり、教科書本文に味付けをして読解を楽しませたり、様々な音読法を提示し、それらをクリアする喜びを味わえるようにする、などがありました。
小中接続の大きな問題は、むしろ別のところにあります。それは、「リバウンド現象」です。小学校で英語活動を頑張る先生は、年々増えています。小学校の先生方、そしてJTE(Japanese Teacher of English)の方々の努力たるや、中学校の先生方も見習うべきもの、学ぶべきものがあります。そういう先生方に教わった児童は、英語の面白さを知り、友だちと関わる喜び、ALT (Assistant Language Teacher)の先生方と英語でやりとりをする楽しさを体験しています。そして、中学校に入学後、本格的に英語を学習することを楽しみにしています。
しかし、それらの児童が入学した中学校では、教師が一方的に説明し、生徒を指名して和訳や解答を言わせ、板書を写させて、ワークブックをやらせるという、旧態依然とした授業が行われているといった場合、彼らは中学校の授業に失望し、英語が大嫌いになるというリバウンド現象が発生するのです。最近の子どもたちは感情が態度に表れますので、つまらない授業では姿勢が悪くなったり、あくびを連発したり、居眠りをしたりします。それを教師が叱責し、生徒が反発し、教師との人間関係が悪くなり、ひいては授業崩壊につながっていきます。
中学校の先生方、小学校英語を勉強してください。小学校に行って、授業を見てきてください。小学校の先生方が、どれほど苦労し、どんな工夫や努力を行っておられるかを見てきてください。そして、小学校の先生方がどのように児童を扱っておられるかを見て、教師が歩み寄り、つかみ、連れてくるという指導法を参考にしてください。今どきの子どもたちは、もはや「ついてこい」ではうまくいきません。しかし、中学校の先生方は、いまだに昔のやり方を踏襲している場合が多く、それが中1ギャップの一因にもなっています。
私はよく授業を見に行きますが、小学校ではいい授業が見られることがよくあります。一方中学校や高校では、数十回に1回しかいい授業が見られません。いい授業とは、「わからなかったことがわかるようになる」「できなかったことができるようになる」「生徒が伸びを感じて、さらに練習をしようとしている」「生徒同士が関わる中で、お互いを理解し、協力し、何かを作り上げていく」などの要素があると思います。中高では、そういう授業に出会えることが少ないのです。一方的な説明型授業や、楽しいかもしれないけど力がつかないゲームが中心の授業では、生徒は満足しません。
中高の先生方、頑張りましょう!