田尻先生
Q.8
2012年度から中学校の教科書が変わることが決まっていて、一部の英語教育雑誌には、各教科書会社の特徴など書かれています。田尻先生が、2012年度版中学教科書について、どのように分析しているかを教えてください。  

私は以前、検定教科書が面白くないと思って、5年間教科書を使わずに授業をしたことがあります。各学年1クラスで、全クラスを私が担当していたこともあり、自由にできたのがその要因です。このときは、教科書を分析し、教えなければならないことをレポート用紙に書き出し、教えたものは黄色いマーカーで色を塗り、ほとんどの生徒がマスターしたと思ったものには赤ペンで○をつけていきました。そのとき以来、教科書を教える授業から、生徒が何をマスターしており、何ができていないかを測る授業に変わりました。

次に転勤した学校は、複数の教員がひと学年を担当していました。ですから、教科書を使わざるをえなくなりましたが、その前の5年間で、何をマスターさせるべきかがわかっていましたので、教科書に振り回されることはなく、教科書を使いこなせるようになりました。このときから、様々な教科書本文の使用法を考えるようになり、今ではかなりの数の本文を使った活動を持っています。

このサイトには、以前私が作成した中学3学年分の到達目標を載せています。私は最初に到達目標を設定し、それを実現できたかどうかを測るテスト(ペーパーテストと口頭テスト)を作成し、それから教科書を開いて、これらの到達目標に生徒たちがたどり着くよう、日々の授業を作っていました。ですから、教科書はどこの会社のものでもかまいませんでしたし、面白くない単元は他の教材に差し替えたり、以前の教科書からヒット作を抜き出して使ったりしていました。私にとって、教科書はリーディング教材に過ぎず、生徒に英語力をつけるためのよい教材だと思ったところを抜き出して使うという発想でした。

2012年には新しい中学校学習指導要領が施行されますが、外国語では教科書で扱ってよい単語数が前回の900語から1200語に増えましたので、それをどう定着させるかが大きな鍵になってきます。何度も何度も語句が繰り返し出てくるのが理想ですが、それを実現している教科書は多くないと思います。というよりも、現実問題、それは難しいと思います。ですから、単語テストだけでなく、生徒が意味のある文脈の中で語句を使うという体験を多くさせなければならないと思います。

どの会社の教科書であれ、生徒の英語力を伸長させるための教材として使うことは、十分可能だと思います。ただ、教科書本文をうまく使いこなしている先生は多くなく、研究授業などでも、本文を扱った授業を披露する先生はほとんどいません。重要表現は何十年も変わっていませんが、教科書本文は4、5年に1度は変わりますので、これからは、本文をどう扱うかに関しての研究が進められていくといいと思います。

 
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