田尻先生
Q.7
公立校に勤務していましたが、結婚して退職をしました。引っ越した先で英語教室を開き、小学生から中学生までを教え始めました。先生の研修や書籍に感銘を受け、来年度は、『Talk and Talk』(正進社)を使ってみたいと思っていましたが、学校以外には販売されていないため、教材選びに悩んでいます。一般に購入できる範囲で、教材選びのコツをお教えいただけないでしょうか。  

 生徒の英語力を高めるためには、以下の手順が必要です。

  (1)教科書や問題集を分析し、教えるべき事柄を表にまとめてみる。
  (2)それぞれの項目をマスターするのにどれくらい時間がかかるかを
    考える。
  (3)短期集中型練習と長期継続型練習をミックスさせながら、
    どのようにドリルさせるかを考える。
  (4)自分で作れるものは自分で作り、市販の教材の方が有効なものは
    そちらを利用する。
  (5)生徒のドリルを音声面と文字面でチェックし、改善点を指摘し
    アドバイスを与える。
  (6)できるようになるまでつきあう。

  私は30代〜40代の頃、東京や大阪へ行って、輸入教材を扱っている大きな書店に行き、毎回半日は教材とにらめっこしました。そして私財を投げ売って(と言うほどのものでもありませんが)次々と教材を購入し、授業で使ってみました。その結果、どのような教材がよいのかが見えるようになり、日本の教育現場で生かすにはどのような点をどのように改善すべきなのかもわかるようになってきました。そこから、自作の教材作りが本格的に始まりました。

 当時は教科書が嫌いでしたし、生徒も教科書がつまらないと言っていたこともあり、数年間はほとんど教科書を使わずに授業をしていましたので、自然とシラバスを自分で作るようになり、その中で学年ごと、学期ごとの到達目標を何にすべきかを強く意識するようになっていました。そして、それらの目標を達成するための教材を作ろうと努力しましたし、書店に行った際も、目標達成に貢献してくれると思われる教材を選ぶようになりました。つまり、「何かおいしい食べ物はないかな。」と思ってスーパーに行くのではなく、「この料理を作りたいのでこの食材がほしい。」と思ってスーパーに行くのと同様、目的にかなった教材を探しに行くようになったのです。それ以来、教材に振り回されるようなことがなくなりました。

  『Talk and Talk』は、動詞、代名詞、形容詞、副詞句、前置詞句など、語順の構成要素ごとに練習をしていく形式ですので、かなり focus on form の傾向が強いドリルブックです。語順指導をされる先生は、『Talk and Talk』のよさを認めてくださいます。私のイチ押しはやはり『Talk and Talk』ですが、先生がご自分で似たような問題集を作られるのも1つの方法だと思います。ただ、『Talk and Talk』は最近の子どもたちの嗜好やトレンドを反映してデザインとレイアウトにこだわりましたので、先生のオリジナルプリントが文字だらけで子どもにとって取っつきにくいプリントにならないよう、気をつけてください。

 もし生徒さんが自分で購入した問題集や通信教育の教材を持っていたら、それを使ってあげるのも一案です。ドリルには3つの段階がありますが、それらの教材は Stage 1 で使用できます。

  Stage 1:機械的なドリルでもいいので、量を確保する
  Stage 2:知的で楽しいドリル
  Stage 3:応用力を求められる、発展的なドリル

  『Talk and Talk』のページは、これら3つのステージに分けて作ってあります。特に中2は Stage 2 のドリルをたくさん入れるよう心がけ、2年後半からは Stage 3 を増やすようにしました。現在市販されている問題集や教材は、Stage 2 が少ないですし、Stage 3 は解答と解説が作りにくいので、入れられていないのが実情です。しかし、学力を高めるためには、Stage 3 のドリルが不可欠です。詳しいことは研修会などでまたお伝えいたします。

 いずれにしても、市販のものが完全とは言えませんし、すべて自作のものにしようとすると、視野が狭くなったり先生の負担が大きくなりすぎたりしますので、出版されているものと自作のものを併用されるほうがよいと思います。教材や教科書を採点できる基準を持つことが、教材選びのポイントになるのではないでしょうか。

 
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