田尻先生
Q.62 英語の授業について
自分はよく英語の授業を受けている時など、将来自分が授業する時のことを考える時があります。「どうやって授業展開すれば面白いか」など…

ある日ふと思ったことがあります。「語彙や文法などのいわゆる受験のための英語を教えて定期テストや、模試などの成績も上げつつ、会話力を身につけるためにはどのような授業構成、展開にすれば可能になるのか」と…

田尻先生ならどのような授業を年間通して行いますか?
 

 入試を突破するためには必要なものは、以下のようなものなどです。

 (1)語句
 A)見た瞬間意味が分かる語句
 B)文字を音声化して意味が分かる語句

 (2)文構造
 A)単文
 B)複文
 C)後置修飾(高校入試はここまで)
 D)強調構文
 E)挿入
 F)倒置
 G)付帯状況
 H)分詞構文
 I)仮定法

 (3)リスニング力
 A)語句
 B)スピード
 C)発音(bag vs. bug, glass vs. grass)
 D)音の連結(in an hour, There is an apple in it.)
 E)音の崩れ(Not at all.)
 F)音の脱落(A hundred and twenty soldiers made a sudden attack on his troop.)

 (4)論理的思考力

 (5)ライティング力
 A)語数vs.文構造
 B)文脈と論理性

 一方、コミュニケーションに必要なものは以下のようなものなどです。

 1. 手紙やメール
 A)単文
 B)複文
 C)後置修飾
 D)強調構文
 E)付帯状況
 F)分詞構文
 G)仮定法
 H)読み手を大切にしようとする意識(わかりやすさと文字のていねいさ)

 2. 口頭でのやりとり

 (1)聞く
 A)語句
 B)スピード
 C)発音(bag vs. bug, glass vs. grass)
 D)音の連結(in an hour, There is an apple in it.)
 E)音の崩れ(Not at all.)
 F)音の脱落(A hundred and twenty soldiers made a sudden attack on his troop.)

 (2)話す
 A)単文
 B)複文
 C)後置修飾
 D)強調構文
 E)付帯状況
 F)分詞構文
 G)仮定法
 H)聞き手を大切にしようとする意識
 I)文脈と論理性

 つまり、入試に向けてつけるべき力と、コミュニケーションで求められる力は同じなのです。日本の高等学校の英語授業では、多重構造を持つ英文を理解させることで終わっているケースがあり、それを体に入れるトレーニングが不足しています。暗記するまで音読させてこそ、会話力がアップします。

 私の場合、語順表指さし暗唱をさせますので、意味と構造を考えながら英文を暗唱するというトレーニングを大量に行うことになります。例えば、U.S. President Joe Biden proposed a sweeping new $1.8 trillion plan in a speech to a joint session of Congress on Wednesday, pleading with Republican lawmakers to work with him on divisive issues and to meet the stiff competition posed by China.という文は、次のように語順表を指さしながら音読→暗唱させます。

<1層目>
1層目の図
『だれ何が/は』U.S. President Joe Biden
『どうする』proposed
『だれ何を/に』a sweeping new $1.8 trillion plan
『その他』in a speech to a joint session of Congress on Wednesday,
『どのように』pleading以下全て

<2層目>
2層目の図
『どうするing』pleading
『前+だれ何』with Republican lawmakers
『〜するよう』to work以下全て

<3層目>
3層目の図
『to+どうする』to work
『その他』with him
『その他』on divisive issues

and
<3層目2個目>
3層目2個目の図
『to+どうする』to meet
『だれ何を/に』the stiff competition posed by China

名詞句・名詞節の図(普通名詞編)

 これを何度もやるうちに、この英文の意味と構造を明確に理解するようになり、暗記が進みます。この多重構造の文を作る感覚こそ、会話力なのです。

 例えば、「先日私があなたがもしそのイベントに参加することができるのなら会った方がいいよと勧めた男性がさっき電話してきて…」などと言いたい時は、1層目の主語を言い(The guy)、そこで接触節による2層目の後置修飾部分(I suggested the other day)が出てきて、その中に3層目の目的節が出てきて(that you should meet)、そのあとに4層目の条件節があり(if you can make it to the event)、さあ次は1層目の動詞(called)に戻るよ、とういのがネイティブの感覚です。そして、1層目の動詞に戻る直前を上昇調で言ったり、息継ぎをしたりします。この感覚が多重構造の英文を理解する上でも大切になってきます。

 語順表指さし音読、語順表指さし暗唱は複雑な構造を持つ英文を理解、暗記するのみならず、会話力の礎となるのです。

 
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