「理解」→「暗記」→「応用・発展」という流れのうち、「理解」は日本語を使わなければ、多くの生徒はついてこられません。文法を英語で説明したり、複雑な構造を持つ英文を英語で説明したりすると、生徒の語彙を超えてしまうことがあるからです。英語で授業をするということは、生徒の語彙を把握しており、教員がその範囲内で表現するという力を求められます。私の場合、生徒がALTの言っていることを理解できなかった場合、私が英語で言い換えていました。すると生徒が「ああ、そういうこと」と言うので、ALTは悔しがっていました。教科書を研究して、生徒の語彙を知ってねとよくALTには伝えていました。
「暗記」は英語で「覚えなさい」と指示すれば、あとは生徒は音読等の練習に入りますので、オールイングリッシュでいけます。「応用」も、語句を入れ替えて新しい英文を作るか、文の形を変えて新しい文を作るかですから、英語で指示すればあとは生徒が英語で練習をしますので、オールイングリッシュです。「発展」は教科書本文から離れて、調べ学習をして発表したり、ディスカッションやディベートをしたりすることを示していますので、オールイングリッシュで行います。ということは、「理解」→「暗記」→「応用・発展」をバランスよくやっていたら、75%から80%は英語で授業することになります。
私の場合は、中1は毎日のようにクラスルームイングリッシュを教え、ノートの最後のページから写させ、それを極力使うよう励ましていました。私自身もなるべく英語を使いながらも、日本語を交えてストレスを与えないようにし、毎日生徒が分かる英文を増やすようにしていました。ある時「今日全て英語で授業したけど、気がついた?」と尋ねた時、「え、そうだったっけ?」と言われたことがあります。
中3になると、ほとんど英語だけで授業をすることができますし、生徒も私に対して何か話しかける時は、ほとんど英語でした。ある男子生徒が遅刻してきた時、教室のドアを開けた直後に“I’m sorry I’m late. I have a stomachache. May I go to the school nurse’s room?”と言ったので、急いで保健室に行かせたことがあります。腹痛を我慢しながら練習してから来たのではないかと思い、申し訳ない気持ちになりました。
高校のみならず、中学も授業は原則として英語で行うこととなりました。極力英語を使うこと自体は間違いではないと思います。しかし、日本語という財産を否定する必要はなく、日本語を使った方がより効果的だと思われる場面では、日本語を使われればいいと思います。サイトトレーニングでも語順表指さし暗唱でも日本語を使いますので、全て英語でと言うことはあり得ないと思います。最終的にネイティブとやりとりをする時には日本語が頭から消えていくことを目標にして、そのプロセスでは日本語を有効活用されることをお勧めいたします。