私は高校入試を分析し、高校入試で県平均を15点以上上回ることを目標に3年間授業を作ってきました。そして、中1の1学期の中間テストから高校入試を視野に入れて問題を作成するよう心がけていました。したがって中3の3学期はすでに9学期中8学期終わっており、その時になって入試対策をしても付け焼き刃だと考えていました。それに、8学期頑張ってきた成果を生徒に感じてほしいと思っていましたので、中3の3学期はそれまでにまして深く考えさせたり、驚かせたり、感動させたりする授業を行うよう心がけていました。
若い頃は、中3の3学期には教科書の語句を使ってクイズ合戦をよくやっていました。各都道府県の高校入試問題は、その都道府県で使用されている教科書の語句を使って作成されるからです。中3の3学期になると、それまでサボっていた生徒が頑張り始めて周囲の生徒の焦りを誘い、全員が必死になって語句を覚えたものです。
長文読解ができるかどうかは、どれだけ語句を知っているかに加え、英文構造が分かることと、文脈を捉える力や代名詞が何を指しているかを理解する力などが必要です。これらは教師が解説すれば分かるというものではなく、生徒がたくさん練習する中で身につけていくものです。お勧めなのは、「語順表指さし音読」や「あなたも漫才師」などです。詳細は、拙著『英語教科書本文活用術!』(教育出版)をご参照ください。
教科書を3冊全て覚えてしまえば、入試には対応できます。ですから、教科書の英文を少しでも暗記することを目指して徹底的に音読することが大切なのですが、多くの生徒が「文字を音声化する音読」に終始しており、「意味を音声化する音読」をしていません。語順表指さし音読は意味を音声化する音読であり、それに加えて教科書本文を使って生徒同士でQ&Aをさせると、かなり力がつきます。
音読は「語句や文を暗記する」ことを目的として行いますが、同時に「リスニングの点数を確保する」ためにも行います。
会話をする時は情報の授受が主たる目的ですので、発音や文法は多少間違っても通じればよいのですが、教科書等の音読をする時はネイティブ真似音読をさせなければなりません。指導が不十分なままで生徒に音読をたくさんさせると、彼らは我流の音読をしてしまい、間違った音を耳にたたき込むことになります。すると英語ネイティブの方と発音の乖離ができてしまい、同じ英文を読んでも異なる音になってしまいます。
例えばfrom an art museumはfrom an artの部分が全てつながり、artのtはほぼ聞こえませんが、それを指導している先生の生徒はその音が脳にインプットされ、経験値が上がって聞き取れる語句が増えていきます。「アダ」のような音が聞こえた時、発音指導・音読指導されている生徒はat theだなと経験則から推測します。「アットザ」と発音している生徒はこれは聞き取れません。
リスニングのあとでスクリプトを渡し、英文の意味を解説することは大切なのですが、それは「文字→意味」という流れであり、「音声→意味」ができなかった生徒の問題は解決していません。「音声→文字」ができれば、「音声・文字・意味」が結びつきます。ですからディクテーションは大切なトレーニングとなります。そして、書き取れなかった生徒は、@語句が分からなかったのか、Aスピードについて行けなかったのか、B音の連結・同化・脱落・崩れが分からなかったのかを分析し、改善を図らなければなりません。
本ウェブサイトの「英語ネイティブの人の発音の特徴」に記載している10種類のルールは音の連結・同化・脱落・崩れを集めたものですから、これらのどれがどこに当てはまっていたのかを分析させ、ネイティブ真似音読をさせるとリスニングの点数は上がります。