私の場合、英単語の意味調べは意図的に選んだものをやらせています。全て調べさせるのは時間の無駄です。例文を読ませたい、用法解説を読ませたい、コロケーションについて考えさせたいという語は調べさせますが、日本語と英語の1対1対応の語などはリストアップして表にし、渡してしまいます。辞書を使うことはとてもいいことですが、それだけに時間を取られても力はつきません。
語学は、「理解→習熟→習得」という流れで進みますが、意味調べは「理解」の段階に過ぎません。ですから、調べた単語が入った文章を何度も読んだり、ライティングの中で使ったりすることのほうが重要なのです。「習慣化しない宿題」というのは、生徒が伸びを実感できないことが原因の一つになっていることが多く、授業内の活動にしても、宿題にしても、それをやった結果こういう力がついたという感覚を持ってこそ、生徒は積極的に取り組みます。授業が語句の意味チェックや本文の読解だけに時間を割かれているのであれば、生徒は伸びを実感できません。そういう授業で、毎レッスンごとに新出語句の意味調べをやらされれば、楽しみより苦痛が多く、英語学習に対する熱意はどんどん失われていきます。生徒は、伸長感、達成感、満足感が持てる授業が大好きです。
我々は、生徒が「@初めて読んだものが理解できる」、「A初めて聞いたことが理解できる」、「B頭の中にある言葉を英語で言える」、「C頭の中にある言葉を英語で書ける」ようになるために授業をしています。その喜びを味わうためには、教科書以外の読み物を用意したり、ALTに何かを語ってもらったり、感想文やエッセイなどを書かせたりしなければなりません。
その前段階のトレーニングでは、@とAを実現するために英和辞典を使って語句を増やし、BとCを実現するために和英辞典を使います。教師が教え込むだけの授業でなく、生徒がもっと知りたい、もっと知ってほしいと思う授業では、英和辞典も和英辞典も必須のアイテムなのです。
辞書指導は、細かいステップが必要です。使用上の注意に関しては、私は、東京の北原延晃先生と一緒に、辞書指導ワークショップで全国を回っていますが、和英辞典の使い方を担当しています。英和辞典については、北原先生が「ここまで緻密にされるのか!」と感激するぐらい、素晴らしい実践をなさり、大きな成果を上げておられます。このホームページでも、辞書指導ワークショップがあるときは開催日時や場所などの情報をアップロードしますので、ご参照ください。