GTEC通信生徒の英語力を高めるヒント

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Vol.133

全学部の入試に「外部英語試験活用方式」を導入し、「融合型グローバル教育」の発展につなげる

甲南大学

甲南大学

開学:1951(昭和26)年
大学所在地:(岡本キャンパス)神戸市東灘区岡本8−9−1/(西宮キャンパス)西宮市高松町8-33/(ポートアイランドキャンパス) 神戸市中央区港島南町7-1-20 
公式サイト:https://www.konan-u.ac.jp 
学部・学環・研究科数:8 学部 14 学科、1学環、4 研究科
教職員・学生数:教職員数437人、学生 9,015人(2023年5月時点。大学院生含む。)
建学の理念: 人格の修養と健康の増進を重んじ、個性を尊重して各人の天賦の特性を啓発する人物教育の率先

取り組みのポイント

  • 全学部の一般選抜・公募制推薦入学試験に「外部英語試験活用方式」を導入
  • 「外部英語試験活用方式」入試の拡大のため、独自の得点換算表を1点刻みで作成
  • 4技能を統合して学べるカリキュラムと実践的に学ぶグローバルゾーンの利用を推進

取り組みの詳細

英語4技能を評価し、多様な生徒を受け入れるため、「外部英語試験活用方式」を拡大

 甲南大学は、人文・社会・自然科学の8学部・14学科・1学環と修士・博士課程まで備えた4研究科を擁する総合大学です。学部生と大学院生合わせて約9,000人が学ぶ「ミディアムサイズの総合大学」であるため、学生と教員の距離が近い環境で、学部の垣根を越えて学生同士が刺激し合って学ぶことができます。それを生かして、学生一人ひとりの個性を尊重し、可能性を引き出す教育を実践しています。
  開学70周年を迎えた2021年、「KONAN U.VISION 2025」を策定し、伝統のうえにたゆまぬ革新を重ねていくための基本方針及び施策(戦略)として、6つの教学新機軸を推進しています。その中の1つが「融合型グローバル教育」の発展です。すべての学生が充実した外国語教育を受けられるようカリキュラム改訂を行い、留学プログラムを充実させ、グローバルゾーンを整備して、グローバル人材の育成に力を入れています。
 大学入試もそうした本学の教育の進化と大学を取り巻く社会の環境変化に合わせて改革しています。外部英語試験を活用した入試は、2017年度入試から「一般選抜入学試験(以下、一般選抜)」の「共通テスト利用型」において導入し、2021年度に見直し等を行ってきました。それを2023年度入試において、全学部学科を対象に「外国語(英語)」の得点に代えて、GTEC・英検などのスコアを得点換算し、合否判定を行う「外部英語試験活用方式」として、「公募制推薦入学試験教科科目型」「一般選抜前期日程・中期日程」に導入しました。2024年度入試においても継続します。
 2023年度入試において「外部英語試験活用方式」を拡大した理由は2点あります。
 1点目は、高校生が日ごろから学ぶ4技能の評価を入学試験に使えるようにすることです。本学の入学試験は求める学生像を意識した問題を出題していますが、本学独自試験で4技能を評価することは容易ではありません。そこで4技能を評価できる外部英語試験を用いる方式を導入しました。本学の独自試験を残しながら外部英語試験の活用を追加することにより、受験生の選択肢を広げ、多様な受験生が本学に挑戦できることを目指しました。受験しやすい入試に向けた改革の一環です。
 センター試験が共通テストへ変更された2020年度当時、外部英語試験も共通テストの仕組みに組み入れられることが議論されました。本学も外部英語試験を組み入れることを検討しましたが、その当時の普及状況に鑑みて導入を見送りました。その後、英語4技能を測定するGTEC・英検といった外部英語試験を受験する高校生が一定数増えたこと、2022年度に高校の新学習指導要領の改訂が実施され高校では英語4技能を統合的に育成する指導の充実が図られたことなどから、外部英語試験を入学試験に広く導入・活用できるタイミングになったと判断しました。
 これまで、受験生の英語力を測る方法は、入試当日の英語の試験のみでしたが、「外部英語試験活用方式」であれば、受験生は目標とする級やスコアを取得するまで何度も挑戦できます。本学としても、受験生の日々の頑張りを受験、入学につなげたいと考え、改革をしました。
 2点目は、実用的な英語力を備えたグローバル志向の強い学生の入学を促すことです。外部英語試験で挑戦する受験生は、英語の4技能に自信があり、留学や国際交流への志向が強いと考えられます。英語の実用的な力を身につけグローバルに活躍したい学生が増えることを期待しています。
 本学は、かねてから「世界に通用する人物」を育成するためグローバル教育に力を入れてきました。留学をサポートする国際交流センターと語学教育を行う全学共通教育センターが協力することで、全学部の学生に国際交流の機会や留学などさまざまなプログラムを提供してきました。海外協定校・認定校の数は、世界21か国・地域、149校にも及びます。新型コロナウイルス感染症が落ち着き始めたこともあり、2023年度海外留学オリエンテーションの参加者は前年度と比較して大幅に増加しました。今年度の入学者は入学後の留学オリエンテーションへの参加率も高く、海外への意識が高まっていることが感じられます。海外留学は、異文化に触れながら、生きた外国語を使って自己を成長させる非常に良い機会となります。本学では、今後も、学生に海外留学を促したいと考えています。外部英語試験活用方式で入学した学生が、留学に挑戦してくれることを期待しています。

「外部英語試験活用方式」導入で受験者数が増加 受験時等のデータを分析し、入試・教育に生かす

 2023年度「公募制推薦入学試験教科科目型」の受験者数は、2022年度入試から1,136人(対前年比204%)増加し、また、「一般選抜」は2,004人(対前年比113%)増加しました。「外部英語試験活用方式」や「中期日程」の追加などが、受験生に好評をもって迎えられたと感じています。とくに「外部英語試験活用方式」を利用した受験生の割合は、「一般選抜前期日程・中期日程」では約28%、「公募制推薦入学試験教科科目型」では約41%に上りました。
  「外部英語試験活用方式」では、試験教科のうち「外国語(英語)」について、GTEC・英検などの外部英語試験のスコアをみなし得点に換算して合否判定を行います。2022年度入試の「一般選抜」の「共通テスト利用型」において、「外部英語試験活用方式」を導入した際は、文部科学省作成の「各資格・検定試験とCEFRとの対照表」をベースとして、10点刻みの得点換算表を用意していました。2023年度入試では、「公募制推薦入学試験教科科目型」「一般選抜前期日程・中期日程」にも「外部英語試験活用方式」を拡大するため、得点換算表を見直しました。2022年度の得点換算表をベースとして、2022年度入学者のGTECを利用したプレイスメントテストのスコアなども考慮して、受験生の実態に合うように換算したものを作成しました(図1)。10点刻みの得点換算表を公開していますが、実際には1点刻みのものを用意し、合否判定に用いています。
 「外部英語試験活用方式」の導入に際して、最も配慮したのは合格ラインの設定です。合格者の選考は、本学の外国語(英語)の試験を受ける「一般方式」と、外部英語試験のスコアを得点換算する「外部英語試験活用方式」とを、別々に行います。「公募制推薦入学試験教科科目型」において、社会科学系の3学部では、第1次選考の筆記試験が外国語(英語)のみであったため、「外部英語試験活用方式」に英語が得意な受験生が多く集まり、本学の外国語(英語)を受験した「一般方式」に比べ、高倍率となりました。一方で、2教科で実施した他の学部学科、また、「一般選抜前期日程・中期日程」の3教科の場合などは、募集単位によって大きな倍率の差は出ませんでした。
 「外部英語試験活用方式」の導入によって、多くの受験生に新たな受験機会を創出でき、多様な学生の受け入れにつながったと考えています。今後、本学外国語(英語)によって合格した入学者と、「外部英語試験活用方式」で合格した入学者の成績状況などを、モニターしていく予定です。また、「外部英語試験活用方式」で合格した入学者の留学や就職といったデータも継続して収集・分析し、今後の入試や教育に役立てていくことを考えています。

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正課・正課外の両面から生きた外国語を学べる環境を整備

 本学は「融合型グローバル教育」を推進するため、外国語教育の改革を積み重ねてきました。全学部で専門分野の学修と並行して、外国語能力、国際社会の現在を理解する力、グローバルに活躍できる行動力を身につけた人材の育成を目指しています。取り組みは、大きく4つあります。
 1つ目は、全学共通教育における英語カリキュラムです。1年次の必修科目「College English」では4技能(reading、writing、listening、speaking)の習得に力を入れています。2年次以降に選択履修できる「中級英語」では、スキルベースの科目とコンテントベースの科目(「Global Topics I」「中級英語Life Topics I」「中級英語Career English I」など)を設置し、「上級英語」ではコンテントベースの科目に絞り、学生のニーズにあった生きた英語を4年間かけて修得できるカリキュラムとしています。
 2つ目は、学内留学を実現するグローバルゾーン“Porte ( ポルト)” の開設です。ポルトには、日本語を学びたい外国人留学生と気楽に交流できる「あじさいるーむ」、主に英語でコミュニケーションする「KONAN LanguageLOFT」(写真)、複数の言語で日本人学生と外国人留学生が共に学ぶ「グローバルラーニングコモンズ」の3つのエリアがあります。1 年次の「College English Listening」「College English Speaking」の成績評価には、このゾーンを活用したアクティビティを組み入れ、「正課」と「正課外」をつなぎ、学生の積極的な外国語学習を促進しています。同科目の履修後も、ポルトの利用を促進するため、「KONAN Language LOFT」で開催される英語アクティビティに参加した学生にポイントを授与しています。このポイントは、学内の評価認定制度「KONAN グローバルサーティフィケイト」に利用され、得たポイント数によって級が与えられます。ポルトにまずは足を運んでもらい、その後の活用を促し、楽しみながら外国語能力が高められるようにしています(図2)。実際、海外留学をしなくても、ポルトを利用して外国人留学生と交流し、高い外国語のコミュニケーション能力を身につけた学生は少なくありません。また、海外留学から帰国後も外国語の力を維持したい学生や、海外留学の体験談を聞きたい学生にも、ポルトのよさをアピールしています。
 3つ目は、学生一人ひとりのニーズにあった海外留学の機会の提供です。語学力に自信がなくても参加しやすい7~10日間の短期海外留学「エリアスタディーズ」を始め、本学の協定校に語学留学するCEFR A2程度からでも挑戦できる奨励留学(語学留学)、協定校の専門科目も履修するCEFR B1程度から応募できる交換留学、協定校の学位も取得できるダブルディグリー留学(経済学部のみ)、世界大学ランキング上位の大学との認定校留学など、語学力や目的に応じた多様なプログラムを用意しています。また、コロナ禍を機に、オンライン留学も整備し、海外留学がしづらい理工系学部の学生や、留学費用を抑えたい学生、長期留学の準備として語学力を高めたい学生にも、留学機会の提供をしています。
 4つ目は、2024年4月にグローバル教養学環を開設し、「グローバル教養学位プログラム(Special Track forAccelerated Global Education:STAGE)」を始めます(図3)。STAGE は1学年の定員を25名とする少人数教育で、言語の異なる2つの国・地域に留学する”ダブル留学”を必修とするなど、グローバルキャリアを志す学生を対象にした特別なプログラムを提供します。異文化理解から社会課題の解決までグローバル社会に必要な教養と実践力を身につけ、グローカル人材として世界基準で考え、社会の第一線で活躍できる人物を育成することを目指します。
 本学は国際系の学部を持たず全学的にグローバル教育を推進してきましたが、文学部や経営学部、経済学部を中心に海外留学の希望者は非常に多く、就職においても海外志向が高まっています。この融合型グローバル教育の新たな展開として、文部科学省の定める学部等連係課程制度を活用してグローバル教養学環を開設しました。グローバル教養学環“STAGE”を加えることで、本学のグローバル教育は新たな段階を迎えることになります。

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外国語教育を含めた「彩り教育」で、学生の探究力を深めていきたい

 本学は「ミディアムサイズの総合大学」の特長を活かし、「専門教育」を柱に据えながら「全学共通科目」「正課外教育」を融合させ、学生の可能性を伸ばす「彩り教育」に取り組んでいます。
 今回、紹介した外国語教育はその取り組みの一部です。本学には、グローバルに活躍する卒業生が大勢います。アナウンサーとして海外取材を行ったり、外資系企業や商社などで海外勤務をしたり、日本企業で海外とビジネスを展開するなど、活躍する分野も多方面にわたっています。
 今後も本学は、学生が学内外で様々な刺激を得て、意欲を持って学びを進められる環境の整備に力を尽くしていきます。大学での学びは、知識・技能を修得するだけではなく、専門分野において自分なりの課題を見つけ、答えを探求し続けることです。本学の環境を活かして、自分なりの「創造的な問い」を見つけてほしいと考えています。
 その「創造的な問い」を深めていく際に役立つのが、外国語教育を含めた異文化理解・国際理解です。外国語を学ぶ際、私たちは言語だけでなく異文化にも触れることになります。留学を経験した学生が、自国とは異なる文化に身を置いて学ぶ過程で、広い視野や批判的思考を身につけ、将来、異なる文化の人々と協働できる人物になることを期待しています。外国語教育は、コミュニケーションの手段として言語を教えるだけでなく、専門分野において学生の探究力を育む上でも大切なものであり、学生が将来建学の精神でもある「世界に通用する人物」になる一助となればと考えます。