世の中では、保護者が子どもにテストで高得点を取らせるため、多額のお金をつぎ込んでいますが、一方で教師は大学でテストの作り方や評価の仕方を学んでおらず、その結果「教科書を1ページずつ進めていった結果できあがった、暗記力を問うだけのテスト」を実施していることが多いのではないでしょうか。授業をよりよくしていくためにも、まずテストについて考えてみませんか。
私は、長期休暇中に次の学期の期末テスト(読む、聞く、書く)を作り、パフォーマンステスト(聞く、話す)の内容も決定していました。目標を明らかにすることによって、授業の質が変わるからです。一番変わったのは、生徒の現時点での学力はどれぐらいか、このままでいくと期末テストは平均何点になりそうか、どう指導していけば70点を超えるか、教科書をどう料理すれば学力が向上するかなど、自分が何を教えたかではなく、生徒がどれぐらい消化しているかを考えるようになったことです。「教科書を何ページまで教えたか」ではなく、「生徒は何をどれぐらいマスターしたか」を考えるようになったのです。
また、中間テストは期末テストの練習試合と位置づけ、期末テストと同じフォーマットで異なる英文を使って作っていました。そして、成績には入れていません。当然中間地点ですので、生徒は習得すべきことを身につける途中であり、平均点は惨憺たるものでした。そこから彼らは期末に向けての1ヶ月間、気を引き締めて、本気になって勉強をしました。何度も何度も同じフォーマットで練習問題を作ってやりましたので、その過程で多読をし、期末テストでいい点を取りたいので間違った問題を自ら分析し、ノートにまとめてくる生徒がたくさんいました。特にfast learnersにそういう生徒が多く、その生徒たちのノートをこまめに見てやりコメントを書いてあげることで、fast learnersの信頼を得ました。fast learnersが先生を支えてくれると、授業が円滑に進みます。一方、fast learnersが先生に愛想を尽かしたり反発したりすると、授業崩壊につながります。
もう1点テスト作りで気をつけていたのは、配点です。どの問題が何点の価値があるかを熟考していました。回転寿司のお店に行くと、毎日皿の値段は同じです。レジでの支払いは、どの皿を何枚注文したかで合計金額が決まります。これをテストに当てはめてみると、毎回100点満点になることはおかしいということが分かりました。そのテストでのねらいと目標がどれぐらい達成できたかを測れる問題を50分で収まる分量にした場合、毎回100点になるはずがないのです。問題の配点を水増しして100点にした中間と期末を合計すること自体、価値の違う点数を足すことになり、その生徒の学力を正確に割り出すことはできないでしょう。(詳しい点数のつけ方は、お悩み相談室>授業に関すること>Q9の回答に書いています。)
また、私は定期テスト前の部活動停止期間になると先生方に呼びかけて協力していただき、試験前勉強会を実施していました。そこでは、普段の「ステージの人(教師)とフロアの人(生徒)」ではなく、机を向かい合わせて同じ目線で同じ目標に向かって協力する教師と生徒の姿が見られます。
学校が落ち着いているかどうかは、教師がいかに生徒のために働いているかを普段から見せているかどうかが大きく作用します。例えば、生徒のノートや生活日記を集めたとき、丁寧にチェックしてコメントをつけて返す先生は、生徒の温かい気持ちを引き出し、生徒の信頼を集めます。一方、はんこを押して返すだけの先生は、「どうせ集めても見ていないだろう。こっちは苦労して書いているのに」という、生徒の冷たい反応しか引き出せません。この積み重ねが、学校の状態を作り上げている1つの要因となっています。
「忙しくて勉強会をしている暇がない」という先生は、プライオリティについて考えてみてください。「職員会などが入って勉強会が開催できない」という先生は、教務主任や管理職と相談してみてください。「テストを作らないといけないので勉強会を開催する余裕がない」という先生、2学期末テストは、夏休みのうちにフォーマットを完成しておきましょう。そしてそのテストで平均70点を超えるには、どんな授業をすればよいか考えてみてください。
また、都道府県の公立高校の入試問題や私立高校の問題を分析し、それを反映した定期テストを作って生徒に説明すると、生徒は「この先生について行こう」と思うようになります。残念ながらテストの作り方を教える大学はあまりありません。しかし、生徒も保護者もテストでいい点を取るために高いお金と放課後の時間を使っているのです。ですから、研修会でテストについて学んだり、書籍を購入してテストについて勉強したりするのは、我々教師にとってmustであると思います。企業の作る試験は、我々の想像を超える労力と思慮によってできあがっていますので、これらもぜひ参考にされるとよいでしょう。
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