授業は、「(1)教科教授力」、「(2)教科の枠を超えた指導技術」、「(3)生徒指導力」の3つの要素が成否の鍵を握っています。そして、その下支えとなるのが、「(4)生徒同士の人間関係」と「(5)教師と生徒の人間関係」です。
転勤した当初や、初めて受け持つ学年は、(4)と(5)がありません。ですから、(1)〜(3)を駆使しながら授業を展開しつつ、(4)と(5)を作っていかなければなりませんし、(4)と(5)が崩れているのなら、立て直すしかありません。他の先生方があきらめておられるのなら、英語科が実績を作れば、その先生方も考え直さざるを得なくなります。生徒は教師に捨てられて心が育つことはありません。
具体的には、まず勉強をしたい生徒、しないといけないと思っている生徒の心をつかみます。家庭学習でなすべきことを書いたプリントを渡し、それをやってきた生徒の面倒を手厚く見てやります。状態がよくない学校では、そういう生徒がほったらかしにされていますが、彼らは勉強を頑張りたいし、先生に認めてもらいたいと思っているのです。そういう生徒が先生に対して、「この先生は自分たちのために頑張ってくれているから、何とか支えよう」という気持ちになってくれることが、学校をよくするための第一歩です。
次にそういう生徒のために、授業ではプラス1やプラス2の教材を用意し、個別学習のコーナーではどんどん先に進ませてあげます。それらを終わった生徒は褒めちぎり、そして「悪いけど、〜さんを手伝ってあげてくれない?」と頼むと、「いいですよ」と言ってくれるようになります。クラスの半分が夢中になって教え合いをする状況になったとき、先生は問題を起こす生徒や勉強が苦手な生徒に安心して時間を割けるのです。このことに関しては、昨年NHK総合テレビ『プロフェッショナル 仕事の流儀』で紹介していただきましたので、ご参照ください。
我々の仕事は、教育的愛情を注いだ上に学問の楽しさを教えることです。そのためには、一人ひとりと話し合い、お互いを理解し、一人ひとりを伸ばしていくための方策を練らなければなりません。そのことは大学にきても痛感しています。その意味で、生徒が提出したノートや作品を丁寧にチェックし、アドバイスとコメントをつけて返すことが大切です。いろいろな形で、「1対1で対話をする」ことから始めてみられてはどうでしょうか。
さらに詳しいことは、研修会や講演、書籍などでお伝えします。このホームページの講師予定をご参照ください。 |